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2005年 08月 19日
日本企業の経営陣の方々と話していると時に不思議な考え方が正しい理論として信じられているという状況に直面する。それらは日本の株式マーケットの歴史的なコンテクストの中で正しいと信じられてきただろうし、実際表面的には正しいように機能している手法だったりする。日本で異常に発達している株価のテクニカル分析に似たようなものだが、企業の財務戦略にも根拠は乏しいが経験則に基づくような理論が存在している。例えば良く聞くのは、自社の発行株数が多いからうちの会社の株価は変動が少ない、だとか、安定配当をしていないと株主に迷惑がかかるから、業績連動型配当じゃなくて安定配当が重要、といったことだ。 おそらく株数が多いと株価が変動しにくくなるというのも、歴史的に日本の大企業が大きくなる過程で増資を繰り返し、事業も拡大し、時価総額も拡大。結果として株数も増えたが、時価総額も拡大し、小さな株の売買では株価は大きく変動することは無くなった。そんなところなんだろうと思うが、いつの間に株数が多いと株価が変動しなくなる、というところだけがセオリーとして知れ渡り、株数が多いから業績が上がっても株価が頭打ちになりがちだ、だから自社株買いして株数を少なくしないといけない、なんてことを真剣にやっている一部上場企業もある。不思議なことに同業他社のCFOも同じことを言っていたりするので、経営陣同士の会話の中でネットワーク効果のように根拠は希薄だけどお隣さんもそういっているから間違いないと信じられてきているんだと思う。株数多くて嫌なら株式併合でもすればいいのにと思うがそれでは駄目らしい。 安定配当も日本のエスタブリッシュメント企業の経営陣に強く信望されているセオリーだろう。「うちは安定配当を重視していて…」ということを海外の機関投資家に対してのミーティングでも平気で口にされる経営陣もいらっしゃるが、機関投資家からすればなんで配当性向などを重視しないのか、安定配当と言われるたびにただ単に配当政策が無いんだ、と理解するだけなのである。これもおそらく日本特殊的かつ歴史的な要因なんだと思う。歴史的に見ると、日本は1995年まではキャピタルゲイン課税が存在しなかった。一方配当には所得税が課せられていた。投資家からすれば配当なんて一切せずに全部再投資に回して株価をもっと上げてくれた方がいい、という状況になっていたわけである。すると安定配当ということで念頭にあったのは誰かというと、おそらく安定株主対策だろう。株式持合いしてくれている会社に対して少ないながらも安定的に配当を払うというのが慣行になっていったんだと思われる。今となっては時代錯誤もいいところだし、機関投資家に向かって安定配当を重視していて云々というのもナンセンスだが、安定配当が重要、というところだけ勝手に一人歩きしていっているんではないかと思っている。 予断だが、キャピタルゲイン税率と配当税率は各国によっても違うし、例えばアメリカなどでは政権が変わるたびにそれぞれの税率を変更してキャピタルゲイン・配当に関する投資家の選好度合いをコントロールするということが行われている。現在のイギリスでは、配当とキャピタルゲインの税率は保有期間が1年以下では同じだが、機関投資家に限って、1年を超えて保有している株式はキャピタルゲイン課税が50%削減される(要は少なくとも1年間は保有するインセンティブが強力に働くことになる。2年を超えて保有している場合は75%削減されるはず)。個人は3年を超えて保有してようやく5%下がる程度なのでどちらでも無差別だが。日本も今は配当とキャピタルゲイン税率は同じだが、2000年ぐらいまでは個人投資家では手続きはやや面倒だったがキャピタルゲイン税率を確か10-15%に抑えられたはず。 こんな「とんでも」コーポレートファイナンス理論、おそらく色々な会社でもっともらしい理論として信じられていると思うんですが、他にも例をご存知でしたら是非教えてください。 人気blogランキングへ
by mondenlondon
| 2005-08-19 09:21
| 金融市場
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