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2005年 07月 16日
過去1・2年欧米での買収ファンドの動きは、好調な債券マーケットに支えられ、これまでとは全く違う次元に入ってきている。クラブディールと呼ばれる複数の買収ファンドが集まって買収を行う案件が増えてきていたり、大手企業を傘下に既におさめていることを利用して買収の際にシナジーを追求して事業会社のように行動してきたり、大型買収では事業会社側が買収ファンドをチームを組んだり、あるいは事業会社自らが債券マーケットを活用して大型LBOを実現していたりと。
特に目を見張るのは、金額規模にして5000億円以上の案件がたくさん出てきていること。ナイーブな考えをする人は、買収ファンドが複数チームを組んでクラブディールを行うことを談合だなどと考えたりするようだが、私から見ればこれは買収ファンドのファンドサイズが大きくなってきていると同時に、今まで一社では不可能だった規模の買収案件が複数の買収ファンドがチームを組むことによって実現できるようになってきているということだ。これまで所詮買収ファンドなんてのは時価総額が1兆円前後あるいはそれ以上の大手企業にとっては全く相手にもしないし、なんら脅威でもなかった。そもそもそんな規模の買収ファンド案件はKKRによるナビスコ買収以来10年以上出てきていなかったからだ。時価総額が1兆円を超えるような企業にとっては、所詮、株主価値やら株主重視経営やコーポレートガバナンス云々言われようが、実際問題機関投資家も数%以上の株式を保有することは金額的にも難しいし、よほど間違った経営をしなければ株主からのプレッシャーを本当の脅威に感じる経営陣はいなかった。しかし、この過去1・2年のクラブディールのトレンドはこうした安穏としていた大手企業経営陣の考えを覆してしまった。株価が割安になれば完全にコントロールを取られてしまうような半ば敵対的な買収提案が仕掛けられる可能性が現実のものとなってしまったと同時に、買収ファンドと組んだり、レバレッジドファイナンスで市場から資金調達すれば自らも同業他社を敵対的に買収することが可能になっているのである。 最近のクラブディールの例では以下のような案件がある - 買収ファンド7社(Silver Lake Partners, Bain Capital, Blackstone, Goldman Sachs Capital Partners, KKR, Providence Equity Partners, Texas Pacific Group)による113億ドルでのSun Gard買収 - TPG及びWarburg Pincusによる51億ドルでのNeiman Marcus買収 - EQT及びGoldman Sachs Capital Partnersによる52億ドルでのISS買収 - KKR, Bain Capital, Vornado Realty Trustによる73億ドルでのToys “R” Us(日本名はトイザラス)買収 - Cinven及びBC Partnersによる58億ドルでのAmadeus Global Travel買収 化学業界でも、最近のRoyal Dutch ShellとBASFの石油化学合弁会社Basellの売却では、複数の買収ファンドが興味を示し、初めはBlackstoneとApolloの連合が有利と報道されていたが、これにBain CapitalとGoldman Sachs Capital Partnersが加わり、一大買収ファンドコンソーシアムを作ったと報道されていた。しかし、結果インドのChatterjeeと米Access Industriesの事業会社連合がHaldia Petrochemicalを買収母体会社として44億ユーロで勝ち取ることとなる(その後直近では更にChatterjeeが脱退すると発表。Accessのみで進められる模様)。 事業会社あるいは事業会社を傘下に保有する投資会社自らがレバレッジドファイナンスを活用して行った大型LBO案件としては以下が挙げられる - エジプト人の大富豪Naguib Sawiris氏率いるWeather Investment(傘下にエジプトのテレコム企業Orascom Telecomを保有)による126億ドルでのWind Telecom買収。KKR/ナビスコ案件に次ぐ史上2番目の規模のLBO案件 - ウォーレン・バフェット氏率いるBerkshire Hathawayのポートフォリオ企業MidAmerican Energy Holdingsによる94億ドルでのPacifiCorp買収 - Pernot Ricard及びFortune Brands連合による177億ドルでのAllied Domecq買収。60億ドルをレバレッジドファイナンスで調達 どれも1兆円を優に超える規模の案件である。 上記の例は成功裏に完了した案件たちだが、実際はこの10倍以上は真剣に検討された、あるいは実際にアプローチをかけて交渉が進んでいたが失敗したような案件があるはずだということを付け加えておきたい。こうした最近の超大型M&Aの動きは、様々な業界構造を根本的に覆すまさにトランスフォーメーショナルな案件が多い。ロンドンでバンカーをやっていると、こうした成功した案件例に携わったり、見聞きしたりする機会があるのは当然ながら、実際欧米の大企業や買収ファンドのクライアントと一緒に働いていて、このようなこうした今までに無い規模とクリエイティブさが要求される案件を数多く真剣に検討していることに目を見張られることが多い。こんな欧米の優等生企業でも最近はここまでアグレッシブなことを考えるのか、みたいなここでは書けないようなこともある。新聞などで噂として報道されるニュースもこれまで考えもつかなかったような話が報じられている。例えば仏Valeo(時価総額28億ユーロ)にBlackstoneが興味を持っているらしいとか、独MAN AG(時価総額44億ユーロ)に買収ファンド(Blackstone, Bain, Carlyle, Permira, Cinven, BC Partners, CVCなど大手ファンド)が興味を持っているらしいだとか、GMの金融部門GMACにTPG, Bain, Blackstone, SilverPoint, KKRあたりが興味を持っているらしいといった報道がされている。果たして日本の大手企業はどこまでこうした欧米の動きについていけるのか、正直やや心配である。
by mondenlondon
| 2005-07-16 16:23
| 買収ファンド・ヘッジファンド
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